みなさま
このたび、下記の要領で、2023年度中部地区修士論文発表会を開催することとなりました。
ふるってご参加くださいますよう、お願い申し上げます。
————————————————————–
中部地区研究懇談会(中部人類学談話会第266回例会)
修士論文発表会
◆日時
2023年 6月24日(土)14:00~16:30
修士4名(発表20分+質疑応答10分+入れ替え5分)
◆ハイフレックス開催
-南山大学Q棟Q103教室
-Zoom
参加希望者は6月23日(金)正午までに下記URL(Googleフォーム)よりお申し込みください。追ってアクセス情報をお送りします。
>申込フォーム https://forms.gle/VR1FYpd8FWxmUFzU9
◆プログラム
14:00~14:05 開会の挨拶
14:05~14:35
南智博(南山大学大学院人間文化研究科人類学専攻)
「インカ帝国高地大規模遺跡の空間構造-王領と行政センターの比較-」
(提出先:南山大学大学院人間文化研究科人類学専攻)
14:40~15:10
山中海瑠(名古屋大学大学院人文学研究科・日本学術振興会特別研究員(DC 1))
「岐阜県大矢田神社「ひんここ舞」の歴史的変遷と芸態の再考-人形の物質性に注目して-」
(提出先:名古屋大学大学院人文学研究科)
(休憩)15分
15:25~15:55
渡邊咲紀(長浜市曳山博物館)
「白川郷における互助組織について」
(提出先;名古屋大学大学院人文学研究科)
16:00~16:30
安藤救二(名古屋大学大学院人文学研究科)
「グローバリゼーション下における労働観の変容-性産業への人身の売買を事例に-」
(提出先:名古屋大学大学院国際開発研究科)
◆発表要旨
14:05~14:35
南智博(南山大学大学院人間文化研究科人類学専攻)
「インカ帝国高地大規模遺跡の空間構造-王領と行政センターの比較-」
【要旨】本研究は、インカ帝国の王領と行政センターと呼ばれるカテゴリーに属する大規模な遺跡の建築や空間構造を比較し、その違いを明らかにしようと試みたものである。インカ帝国とはかつて15~16世紀に南米のペルー南高地のクスコを中心に、中央アンデスの広大な範囲に栄えた国家である。この帝国は拡大に伴って、地方統治の拠点となる行政センターと呼ばれる施設を各地に、各王に属する王領と呼ばれる遺跡を首都周辺に配備した。本論では拡大期にあたる3代の王と対応させつつ、各カテゴリー3遺跡を選定し、比較検討を行った結果、遺跡の中心性や倉庫の形状の違いが確認され、その差異をインカの重要儀礼であるシトゥア祭に関連付けて考察を行った。
14:40~15:10
山中海瑠(名古屋大学大学院人文学研究科・日本学術振興会特別研究員(DC 1))
「岐阜県大矢田神社「ひんここ舞」の歴史的変遷と芸態の再考-人形の物質性に注目して-」
【要旨】岐阜県美濃市大矢田の「ひんここ舞」は、小山の斜面に露天の舞台を設け、全長2m重量3㎏を超える巨大な棒人形を遣い、須佐之男命の大蛇退治を演じることで知られている。本研究は、舞で用いられる人形の物質性に注目しつつ、参与観察と聞き取り調査、古文書調査にもとづいて、舞の成立と展開を再検討するとともに、この舞を傀儡人形劇ないし中世的山鉾芸能に分類してきた従来の類型論を再考したものである。人形の物質的特徴と口頭伝承、古文書の内容の検討から、人形には異なる時期に導入された二種類が存在すること、近世以降に舞の担い手が農民へと変わり、芸態と意味づけが再構築された可能性を指摘した。以上の事例研究をもとに、人形の物質性とエージェンシーへの注目の有効性について予備的考察をおこなった。
15:25~15:55
渡邊咲紀(長浜市曳山博物館)
「白川郷における互助組織について」
【要旨】岐阜県白川郷は、合掌家屋の屋根の葺き替えに代表されるユイと呼ばれる互助組織を発達させてきたことで知られている。本論文は、2021年に荻町で実施した現地調査にもとづいて、ユイの現状を記述、考察したものである。荻町が1976年に重要伝統的建造物群保存地区に指定され、1995年には「白川郷・五箇山の合掌造り集落」としてユネスコの世界文化遺産に登録される過程で、茅葺き職人の登場などとともに生活におけるユイは失われ、住民の合掌家屋に対する視点も「住む家」から「保存するべき家」へと変化した。現在の村落生活においてユイの必要性は消失し、そのかわりに現代版「ユイ」と呼び得る任意参加の活動のみが存続している一方、自治体などの行政は、世界遺産としてこの「ユイ」を保護すべき対象として再解釈し、合掌造りという当地域独特の建築とセットで売り出すことで新たな「ユイ」を作り上げようとしていると結論づけた。
16:00~16:30
安藤救二(名古屋大学大学院人文学研究科)
「グローバリゼーション下における労働観の変容-性産業への人身の売買を事例に-」
【要旨】本論文の焦点は、国際的な労働移動とその流れに不可分の関わりをみせる人身の売買問題にある。そのなかでも主に、労働力の性産業への売買を扱う。先行研究の主要な立場には、1)そのような取引を犯罪と見なし、それを防止し被害者を保護するために政策面から何ができるかという規制・管理の立場、2)売り買いされる人々が自己決定のうえで合意する労働ならば、それを認めるべきであるというジェンダー的側面から見たセックスワーク論の立場がある。
===========================
◆お問い合わせ先
中部人類学談話会事務局
南山大学人類学研究所 宮脇研究室気付
E-mail: anthroch[at]gmail.com(@を[at]に置き換えています)
Facebook:https://www.facebook.com/ChubuJinrui/
URL: https://anthroch.wordpress.com/
中部地区研究懇談会担当理事 湖中真哉(静岡県立大学)
中部人類学談話会会長 渡部森哉(南山大学)
中部人類学談話会事務局 吉田早悠里(名古屋大学)、宮脇千絵(南山大学)
Posted