Archive for 5月, 2019

2019/05/16

190615 中部地区 博士論文・修士論文発表会のお知らせ

みなさま

このたび、下記の要領で、中部地区博士論文・修士論文合同発表会を開催することとなりました。
ふるってご参加くださいますよう、お願い申し上げます。

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中部地区研究懇談会(中部人類学談話会第249回例会)
博士論文・修士論文合同発表会

◆日時
 2019年 6月15日(土)14:00~17:45

◆会場
 南山大学Q棟Q103

◆アクセス
 地下鉄名城線「八事日赤」駅より徒歩約8分)
  アクセスマップhttp://www.nanzan-u.ac.jp/Information/access.html
  キャンパスマップhttps://www.nanzan-u.ac.jp/CMAP/nagoya/campus-nago.html

◆プログラム 

《修士論文の部》
14:00-14:30
丹羽悦子(南山大学大学院人間文化研究科・博士前期課程研修生)
「テチナンティトラ壁画「4方位に花弁を開く花」の図像解釈―植物学から読み取る暦の文字とは―」
  (提出先:愛知県立大学大学院国際文化研究科)

14:30-15:00
吉村宥希(名古屋大学大学院人文学研究科・博士後期課程)
「仮面と仮面制作者の関係性に関する研究」
  (提出先:名古屋大学大学院人文学研究科)

15:00-15:30
愛葉由依(名古屋大学大学院人文学研究科・博士後期課程)
「ヒバクシャを生きる人々」
  (提出先:名古屋大学大学院文学研究科)

(15:30-15:45 休憩)

15:45-16:15
木戸志緒子(愛知県立大学大学院国際文化研究科・博士後期課程)
「異文化間教育の視点から見たホームステイプログラムのあり方―寮生活を送る留学生の週末滞在に着目して―」
  (提出先:愛知県立大学大学院国際文化研究科)

16:15-16:45
李易宣(名古屋大学大学院人文学研究科・博士後期課程)
「雲南省の高等教育機関における非専攻日本語教育を受ける学習者の学習ニーズ分析―大理学院の実態調査を例として―」
  (提出先:名古屋外国語大学大学院)

《博士論文の部》

16:45-17:45
賽漢花(愛知県立大学・客員共同研究員)
「学校統合に伴うモンゴル民族教育の変容―中国内モンゴル自治区赤峰市を中心に―」
  (提出先:愛知県立大学国際文化研究科)

*終了後、周辺にて懇親会の予定

◆発表要旨

《修士論文の部》
丹羽悦子(南山大学大学院人間文化研究科・博士前期課程研修生)
「テチナンティトラ壁画「4方位に花弁を開く花」の図像解釈―植物学から読み取る暦の文字とは―」
 (提出先:愛知県立大学大学院国際文化研究科)
《要旨》メキシコの古代都市テオティワカンで発見されたテチナンティトラ壁画「羽毛のヘビと花咲く木」には、木の幹にそれぞれ異なる図像が描かれている。先行研究ではこれらの図像は9種類に分類され、植物名、土地名、リネージ、または紋章と解釈され、一部は暦のサインの可能性もあると指摘されてきた。
 本稿では植物学の知見を取り入れ再考を行った結果、図像は10種類であり、「4方位に花弁を開く花」を伴う図像については、神聖暦の記号のうち6種類との共通要素が明確になった。また象形を組み合わせて描かれた図像は植物名だけでなく、会意表現で自然界における「発芽、成長、開花、枯死、再生」、および社会における「創世神話、生贄、降雨祈願」という摂理と因果関係の隠喩が可能な書記法であるとの解釈に至った。よって当時のポリグロット社会において口承で伝達することができ、かつ、壁画による公開で世界観の教育、共有、拡散、強化にもつながるのでなはいかと結論づけた。

吉村宥希(名古屋大学大学院人文学研究科・博士後期課程)
「仮面と仮面制作者の関係性に関する研究」
(提出先:名古屋大学大学院人文学研究科)
《要旨》本研究の目的は、日本の能面・狂言面の制作過程に対する参与観察に基づき、素材からモノである仮面がどのようにして成立し、現前するようになるのか、そして制作者はどのように仮面に力を感じるようになるのかという問題について、明らかにすることにある。まず、日本における能面と狂言面の歴史について概観した後、これらの面の製作現場についての民族誌的記述を行った。また、現在に至るまでの能面・狂言面の制作者の系譜の再検討も行った。
 結果、能面・狂言面の制作を取り巻く諸環境の変化に伴う精神的意義の希薄化と、「教室」という新たな伝承形式の台頭が確認された。また、面の制作についての語りと実践の検討も行い、模倣概念である「写し」の捉え方、面に対する「生き死に」の表現、「生業」として制作を行っている人物の制作観を描き出した。結論として、能面・狂言面制作の過程は制作に先立って存在する「力」を新たな「力」へと変換することを意味しており、同時に既存の古作の絶対性を強める働きも為していることを示した。

愛葉由依(名古屋大学大学院人文学研究科・博士後期課程)
「ヒバクシャを生きる人々」
(提出先:名古屋大学大学院文学研究科)
《要旨》修士論文では、スティグマともなり得る被爆者表象を改めて問い直し、当事者が既存の被爆者像に対して構築するそれぞれの自己イメージや生き方を捉え直すことを目的とした。愛知県の被爆者団体に所属する9名を対象に、複数回聞き取りを行い、スティグマとなりえた経験や自己イメージの構築に関わる事柄を収集した。その結果、命に関わる不安や恐怖と結びついたり、かわいそうな被害者とされたり、家族にまでも否定的な影響が及ぶと考えられたりするとき等にスティグマとなり得ることが明らかになった。
 先行研究が、他者や死者の存在を必要不可欠とし、受動的で抑圧された被爆者像を構築する傾向にあった一方、本研究からは、70年の時の経過や核・被爆に関する社会の動向と相まって、負のイメージを付与する既存の被爆者像を打ち破り、必ずしも受け身ではなく、自身の体験に自分なりの意味付けを行い、能動的な生き方や自己イメージを構築していることも明らかになった。

木戸志緒子(愛知県立大学大学院国際文化研究科・博士後期課程)
「異文化間教育の視点から見たホームステイプログラムのあり方―寮生活を送る留学生の週末滞在に着目して―」
(提出先:愛知県立大学大学院国際文化研究科)
《要旨》ホームステイは、国際交流として様々な形で実施されている。しかし、このような異文化理解と銘打った国際交流プログラムでは、概して楽しさという一時的な結果が注目され、「その場限りの国際交流」、「安易な異文化理解」に終わっているという指摘があり、ホームステイの内実については検証が十分されていない。
 本論では、寮生活を送る留学生が週末滞在するホームステイに着目し、留学生が参加する目的、また、コーディネーター、学校、受入れ家庭など多様な関係者の認識を分析した。その結果、留学生は新しい人間関係の構築、寮と学校とは異なる異文化接触、精神的支援をホームステイに求めていた。また、学校と地域において異文化交流に対する認識の乖離や情報、連携の不足が見られ、異文化間教育としてホームステイが十分活用されていないことが明らかになり、留学生のために身近な内容をつなぎ、人をつないでいくマネジメントが重要であると結論づけた。

李易宣(名古屋大学大学院人文学研究科・博士後期課程)
「雲南省の高等教育機関における非専攻日本語教育を受ける学習者の学習ニーズ分析―大理学院の実態調査を例として―」
(提出先:名古屋外国語大学大学院)
《要旨》近年、雲南省の大学における非専攻日本語教育を受ける学習者の増加と共に、学習ニーズも多様化されている。一方、コースに使うカリキュラムは昔のままであり、時代の変化に応じた新しい学習ニーズを満たすことはいまだ期待できない。受講者が満足する語学コースを作るためには、適切なニーズ分析が欠かせない。ニーズ分析は、教師が授業の見直しをするとともに、学習環境を見直す手段としても役に立つと考えられる。
 しかし、雲南省では、非専攻日本語学習者の学習ニーズに対する研究が少なく、大学側による把握もまだ不十分である。そこで本研究では、非専攻日本語学習者の学習ニーズの全体像を明らかにすることを目的とする。具体的には、学習者、大学と教師、雇用企業への学習ニーズに対する調査を行い、ニーズ分析を通して雲南省の非専攻日本語教育の問題点と改善策を考案する。また、今後の日本語コースにおける教育の改善に向けた提案も試みる。

《博士論文の部》
賽漢花(愛知県立大学・客員共同研究員)
「学校統合に伴うモンゴル民族教育の変容―中国内モンゴル自治区赤峰市を中心に―」
(提出先:愛知県立大学国際文化研究科)
《要旨》中国の全国範囲で実施された学校統合政策は、モンゴル民族教育の発展に大きな影響を与えた。本研究は、実際に内モンゴル自治区赤峰市において実施されたモンゴル民族学校の統合の実態と学校統合が民族教育に及ぼした影響の現実を分析したものである。
本研究の目的は、中国内モンゴル自治区における学校統合に伴う民族教育の変容を明らかにし、その変化が民族教育に対してどのような影響をもたらしたかについて、現地調査に基づき考察することである。研究方法は現地調査である。牧畜地域、農耕地域、都市部という3つの地域の民族学校を比較し、学校統合に伴う影響を分析した。
 現地調査の結果、民族文化や民族教育を振興するという国家政策の下で実施された学校統合が、その目的とは逆の効果をもたらしているという現実が明らかとなった。民族文化や民族教育を振興する教育政策は、牧畜地域、農耕地域、都市部など地域の多様性や歴史的背景を丁寧にふまえる必要があるということが、本研究が示唆するところである。

◆お問い合わせ先
中部人類学談話会事務局
名城大学外国語学部国際英語学科津村研究室気付
E-mail: anthroch[at]gmail.com(@を[at]に置き換えています)
URL: https://anthroch.wordpress.com/
Facebook:https://www.facebook.com/ChubuJinrui/

中部地区研究懇談会担当理事 亀井伸孝(愛知県立大学)
中部人類学談話会会長 佐々木重洋(名古屋大学)
中部人類学談話会事務局 藤川美代子(南山大学)、津村文彦(名城大学)