220619 中部地区 博士論文・修士論文発表会のお知らせ

みなさま

このたび、下記の要領で、2022年度中部地区博士論文・修士論文発表会を開催することとなりました。
ふるってご参加くださいますよう、お願い申し上げます。

————————————————————–

中部地区研究懇談会(中部人類学談話会第261回例会)
博士論文・修士論文発表会

◆日時
2022年 6月19日(日)15:00~17:50

◆オンライン開催
Zoom を使ったオンラインでの開催とします。
参加希望者は6月17日(金)12:30までに下記URL(Googleフォーム)よりお申し込みください。追ってアクセス情報をお送りします。

> 申込フォーム https://forms.gle/miD2BTfGELZckpbL8

◆プログラム 

15:00~15:05 
渡部森哉(中部人類学談話会会長/南山大学)
開会の挨拶

《修士論文の部》(司会:宮脇千絵・南山大学)
15:05~15:35 
湯屋秀捷(宮古島市総合博物館)
「沖縄県宮古島・島尻の神行事「パーントゥプナハ」の民族誌的研究-参与する者の多様性と行事の位置づけに注目して-」
(提出先:南山大学大学院人間文化研究科人類学専攻)

15:35~16:05 
竹内麻耶華(名古屋大学大学院人文学研究科)
「日本における妙見信仰-中部地域を中心として-」
(提出先:愛知学院大学大学院宗教学仏教学専攻)

16:05~16:35 
野田雅子(名古屋大学大学院人文学研究科)
「イギリスにおける砂糖消費の文化-砂糖工芸に関する考察を中心に-」
(提出先:名古屋市立大学大学院人間文化研究科)

休憩(15分)

《博士論文の部》(司会:深田淳太郎・三重大学)
16:50~17:50 
愛葉由依(日本学術振興会特別研究員PD(受入機関:広島大学))
「被爆者のトラウマにおける時空性と社会性:医療人類学的研究」
(提出先:名古屋大学大学院人文学研究科)

◆発表要旨
《修士論文の部》
15:05~15:35 
湯屋秀捷(宮古島市総合博物館)
「沖縄県宮古島・島尻の神行事「パーントゥプナハ」の民族誌的研究-参与する者の多様性と行事の位置づけに注目して-」

【要旨】
 本論は、沖縄県宮古島市字島尻で毎年旧暦9月に行われる神行事「パーントゥプナハ」の準備から実施までのプロセスを民族誌的に記述し、行事が島尻社会の中でどのように位置づけられているのかを明らかにしようとするものである。
 パーントゥプナハは、3体の「パーントゥ」が集落を巡り、人や家屋に泥を塗り付け、招福と厄祓いを願うことに加え、集落3か所の特定の家では古老たちが酒宴を開き、パーントゥの来訪を待ち、歓待する行事である。論文では、行事の記述を中心的に行うとともに、行事以外でパーントゥのモチーフが現れた事例について記述した。
 行事の記述を通して、行事の実施は、様々な島尻の人々によって行われるものであること、行事の空間は、島尻の人々のみならず、見物人により形作られていること、また島尻の人々、見物人共に、行事への参与のあり方にも差異があることも指摘した。行事外では、パーントゥは島尻の象徴のように扱われる一方で、しばしば宮古島を代表するモチーフとして扱われることもあることを述べた。
 新型感染症の世界的流行に伴い満足な調査を行うことは出来なったが、地域で行われる伝統的行事の一側面を明らかすることはできたであろう。

15:35~16:05 
竹内麻耶華(名古屋大学大学院人文学研究科)
「日本における妙見信仰-中部地域を中心として-」

【要旨】
 星は、古来より北極星をはじめとして、航海や旅を行う際の目印に使われている。特に、漁業や農業、遊牧などを中心とした生業に活かし、星を頼みとする生活のなかで、星は次第に神格化されていき、星神信仰が発展してきたと考えられる。
 日本の星神信仰は、古代中国から朝鮮へと伝わり、日本へ影響したとされている。星を神とする信仰が日本にも伝わり、北極星や北斗七星を神格化したものとして、「妙見」が信仰されるようになる。妙見菩薩は、天皇たちなど貴族層から信仰され、民衆層へと広まっていったとされる。眼病平癒や息災にはじまり、武神や航海安全の神と幅広い特性をもって信仰されていった。
 本論文は、日本における妙見信仰を、先行研究を踏まえて整理した。さらに、従来の研究でほとんど扱われてこなかった、中部地域の妙見信仰を明らかにした。本論文では、愛知県春日井市内津町の内々神社と妙見寺を中心に、実地調査を踏まえて中部地域における妙見信仰の調査を行なった。

16:05~16:35
野田雅子(名古屋大学大学院人文学研究科)
「イギリスにおける砂糖消費の文化-砂糖工芸に関する考察を中心に-」

【要旨】
 イギリスのウエディングケーキ等にみられる砂糖工芸はじめ、歴史上最も砂糖に熱狂したイギリスに関しては、文化人類学、社会学、経済学の視点から取り組まれた研究は多い(S.Mintz、S.Charsley、川北稔ら)。筆者は砂糖工芸がなぜこれほど発展し続けることが可能だったのかを考察した。
 本論ではサトウキビの歴史と、植民地生産の経緯を歴史的に検証した。次に身分制度の確立による食生活の差異化の中で、富と権力のシンボルとなった砂糖の使われ方ついて考察した。さらに時代とともに王室のウエディングケーキが巨大化したこと、紅茶や食器等砂糖の周辺の産業の興りや、砂糖細工職人、そして女性達についても論じた。
 結論としては、砂糖はイギリス王権の拡大のために必須の要素であったこと。中産階級が新たな砂糖消費者となり、貴族的な生活習慣を取り込むこととも深い関連があったこと等が理解された。

《博士論文の部》
16:50~17:50 
愛葉由依(日本学術振興会特別研究員PD(受入機関:広島大学))
「被爆者のトラウマにおける時空性と社会性:医療人類学的研究」

 本論文は、乳幼児期被爆者を含めた広島・長崎県内外で暮らす被爆者において、時代ごとの社会背景やそれぞれの居住環境、ライフステージ、世間の眼差し等といった時空性・社会性に注目し、彼らのトラウマ反応とトラウマ記憶の形成・再生産の過程について明らかにするとともに、被爆者がそれぞれのトラウマとどのように折り合いをつけながら生きてきたのか、彼らの社会関係と社会環境の観点から再検討するものである。
 本論文では、PTSD概念の前提から離れ、外傷性記憶の典型的経路以外の経路にも着目することで、既存のPTSD概念からは零れ落ちてしまう事例を表面化させるとともに、被爆者にPTSD概念を適用することの妥当性についても検討した。本論文の意義は、被爆者のトラウマについて、時代ごとの社会背景やそれぞれの居住環境、ライフステージに着目し、経時的・動態的に再考することで、被爆者における社会的・文化的・政治的な問題をひも解いた点にある。

===========================
◆お問い合わせ先
中部人類学談話会事務局
南山大学人類学研究所 宮脇研究室気付
E-mail: anthroch[at]gmail.com(@を[at]に置き換えています)
Facebook:https://www.facebook.com/ChubuJinrui/
URL: https://anthroch.wordpress.com/
中部地区研究懇談会担当理事 亀井伸孝(愛知県立大学)
中部人類学談話会会長 渡部森哉(南山大学)
中部人類学談話会事務局 深田淳太郎(三重大学)、宮脇千絵(南山大学)

コメントを残す