200913 中部地区 博士論文・修士論文発表会のお知らせ

みなさま

このたび、下記の要領で、2020年度中部地区博士論文・修士論文合同発表会を開催することとなりました。
ふるってご参加くださいますよう、お願い申し上げます。

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中部地区研究懇談会(中部人類学談話会第254回例会)
博士論文・修士論文合同発表会

◆日時

2020年 9月13日(日)13:00~17:45

◆オンライン開催

Zoom を使ったオンラインでの開催とします。
参加希望者は9月11日(金)18時までにこちらよりお申し込みください。追ってアクセス情報をお送りします。

◆プログラム

《修士論文の部》
13:00–13:30
朴根模(名古屋大学大学院人文学研究科博士後期課程)
「在日コリアン社会の食文化変容に関する人類学的考察 —大阪市猪飼野・生野地域を事例に—」
(提出先:名古屋大学大学院人文学研究科)

13:30–14:00
福田薫(愛知県立大学国際文化研究科博士後期課程)
「スピリチュアリティに関する宗教学的考察 —南インドのオーロビルを事例として—」
(提出先:愛知県立大学国際文化研究科)

14:00–14:30
伊藤紫
「地域社会に根ざす手織物 —八重山地域 小浜の事例—」
(提出先:南山大学大学院人間文化研究科)

14:30–15:00
片山詩音
「胡弓の事例研究に基づく音色の分析と芸能史構築の発展性に関する考察」
(提出先:名古屋大学大学院人文学研究科)

15:00–15:30
高田祐磨(南山大学大学院博士前期課程研修生)
「テオティワカン土器の分析と考察 —「月のピラミッド」出土の土器群を対象に—」
(提出先:愛知県立大学国際文化研究科)

(15:30-15:45 休憩)

《博士論文の部》
15:45–16:45
加藤英明(南山大学人類学研究所非常勤研究員)
「「単品モノ」をつくる町工場の民族誌 ―西三河地区における自動車生産ラインの裏側で―」
(提出先:南山大学大学院人間文化研究科)

16:45–17:45
日丸美彦(愛知県立大学多文化共生研究所)
「文化の教育資源化と教育資本 ―フィリピン・ルソン島北部山岳地域ハパオ村での収穫儀礼の復活と教育演劇の実践―」
(提出先:愛知県立大学国際文化研究科)

 

◆発表要旨

《修士論文の部》

13:00–13:30
朴根模(名古屋大学大学院人文学研究科博士後期課程)
「在日コリアン社会の食文化変容に関する人類学的考察:大阪市猪飼野・生野地域を事例に」
【要旨】
大阪市猪飼野・生野は戦前から現在に至るまで、日本最大規模のコリアンタウンである。本発表では、戦前から現在に至るまでの同地域の在日コリアンの食文化変容を対象とする。在日コリアンが日本社会と衝突し、融合していく過程の中で行われたネゴシエーションという観点から、以下二点に注目して議論を行う。
一つは、在日コリアンの食文化の歴史的変遷に注目することである。そのために、①在日コリアンの経済環境など在日コリアンを取り巻く社会環境とその変化、および②来日時期の違いや帰化、結婚による立場と国籍の変化といった在日コリアン社会内部の多様化を、在日コリアンの食文化の形成と変化に影響を与える要素として取り上げる。
もう一点は、在日コリアンの食文化の継承、すなわち文化の再生産に注目することである。移住集団は、母国と異なるホスト社会の環境・社会・文化などのなかで、母国での食文化をそのまま維持することは困難である。しかしながら、移住集団は妥協による食文化の変化を受け入れながらも、他方ではエスニックタウンや各家庭レベルで自分たちの食文化を維持し継承する傾向がある。
このことから、猪飼野・生野の在日コリアンの食文化変容は、日本と韓国という文化的境界が混ざりあった結果であり、こうしたなかで生じる文化的ネゴシエーションを通じて、文化の混種性が現れるという論点を提示する。

13:30–14:00
福田薫(愛知県立大学国際文化研究科博士後期課程)
「スピリチュアリティに関する宗教学的考察:南インドのオーロビルを事例として」
【要旨】
本論は、インドに所在する目的共同体、オーロビルにおけるスピリチュアリティの在り様、宗教とはどういう関係性にあるのか、を明らかにすることを試みるものである。そのための手がかりとして同共同体で観察される「宗教性」、つまり宗教的象徴やオーロビル居住者の宗教的体験、そして「個人性」に注目した。「スピリチュアルであるが宗教的ではない」と謳うオーロビルのスピリチュアリティをめぐっては、同共同体の思想的支柱である二人の中心的存在、オーロビンドとマザーの間の「宗教とスピリチュアリティの区別」に関する差異から生じる矛盾があること、創立者であるマザーの影響をより大きく受けているオーロビルではそもそも「スピリチュアリティ」以外の在り様が許されていないこと、「宗教」を否定し忌避するオーロビルの中にも宗教的象徴に満ちた事物や宗教的体験の語りが見られ、スピリチュアリティと重なって併存・共存していることを指摘し、結論とした。

14:00–14:30
伊藤紫
「地域社会に根ざす手織物 ―八重山地域 小浜の事例―」
【要旨】
沖縄県八重山地域では、織物の多様な担い手が活動している。特に小浜島では、年中行事で適切な種類の手織りの着物を着ることが規範となっていると、先行研究で指摘されてきた。そこで、本論では、現代の地域社会において、この規範が共有・再生産される過程と、織物生産が作り手にもつ意味を考察した。
行事の観察と作り手のインタビューから織物の生産・使用の両場面を検討した結果、小浜の織物が、作り手・使い手の意識と実践において、義務的性質と趣味的性質を併せもち、その両面を集落内の相互評価に覆われていることが分かった。また、小浜の織物は集落の暮らしに根ざしているが、それと同時に、集落共同体の存続に織物が貢献していることが指摘できた。加えて、小浜の織物生産・使用は、八重山地域の織物の他の担い手の活動や行政施策とは異なる文脈にありつつも、それらと部分的に関係性をもち、ときに支えられていることを示した。

14:30–15:00
片山詩音
「胡弓の事例研究に基づく音色の分析と芸能史構築の発展性に関する考察」
【要旨】
本発表では、日本の伝統的な擦弦楽器である胡弓を主題とした修士論文の内容を紹介するとともに、この調査研究の内容に関連して、その後の社会人生活の過程で得られた知見をふまえ、博士後期課程以降における調査研究の内容と課題についても言及したい。
修士論文では、実際に演奏される場として、富山県民謡「越中おわら節」を事例に楽器の音色上の特性を対象とした。研究方法として、フィールドワーク及び聞き取り調査に基づき、演唱者が解釈する音色に対する語りを収集した。また、音楽的な図式として演唱の基本形を抽出するため楽譜化を試み、全体的な楽曲の構造を分析を実施した。語りと採譜の相互補完により、胡弓の位置づけや演唱への当事者意識・評価と、実際の音との比較から表象される音色の特性ついてより詳細な考察を試みた。
今後は、胡弓を用いる花街にも調査研究の対象範囲を広げ、楽器としての胡弓に引き続き着目しつつ、花街の芸能形態、音楽性における特徴を明らかにするとともに、花街の芸能と音楽を日本の芸能史の中に位置づけていくことを今後の課題とする。

15:00–15:30
高田祐磨(南山大学大学院 博士前期課程研修生)
「テオティワカン土器の分析と考察 ~「月のピラミッド」出土の土器群を対象に~」
【要旨】
昨年度1月に提出した修士論文は、古代メソアメリカ文明の都市テオティワカンから出土する土器について、充分に研究が進展していない都市形成期の状況などについて、とりわけ土器研究に着目して分析・報告を行ったものである。
現在、テオティワカンの都市形成期の土器の先行研究はわずかであり、その比較研究に乏しい。このような状況において、同遺跡のモニュメントである「月のピラミッド」は、この都市の起源研究・土器研究において重要な土器資料を提示している。このことを踏まえ、「月のピラミッド」出土の土器を対象に数量分析を行い、テオティワカン土器研究及び起源研究に貢献するようなデータの提示を通じて、これらの研究において未解明とされている問題点に関連して二つの設問を設定し、それにどのような解答ができるかを検証した。
分析の結果として、本論文は設定した二つの設問に適切な解答をすることができたと考える。しかし課題点もいくつかあり、それを踏まえつつ今後は「月のピラミッド」の層位ごとの土器の構成比に着目してそれぞれの層位での土器の諸型式の出土比率から、テオティワカンの土器文化について考察したい。

(15:30-15:45 休憩)

《博士論文の部》

15:45–16:45
加藤英明(南山大学人類学研究所非常勤研究員)
「「単品モノ」をつくる町工場の民族誌 ―西三河地区における自動車生産ラインの裏側で―」
【要旨】
本発表は、愛知県西三河地区の「単品モノ」の町工場の事例から、現代の工業社会に展開するモノづくりのありかたを考察するものである。「単品モノ」の町工場は、1回の発注個数が少量で素材や形態が毎回異なる設備部品や試作部品(=「単品モノ」)を製作する小規模工場であり、トヨタ関連工場の生産ラインの裏側で量産システムの維持に関わり存立している。しかし、従来のトヨタをめぐる研究では「単品モノ」の町工場の存在が看過されてきた。そのため、その実態を民族誌的記述でもって明らかにし、同時に人類学で研究蓄積の少ない現代の工業社会のモノづくり研究に寄与する。具体的には、「トヨタ生産システム」を概観し、「単品モノ」の町工場1社を中心に、その製作ネットワーク、仕事場のレイアウトの変遷、製作工程などを主たる事例として示す。そして、「単品モノ」の製作が「単品製作ブリコラージュ」というべき特徴をもち、なおかつ「トヨタ生産システム」と共進化し発展したことを指摘する。

16:45–17:45
日丸美彦(愛知県立大学多文化共生研究所)
「文化の教育資源化と教育資本―フィリピン・ルソン島北部山岳地域ハパオ村での収穫儀礼の復活と教育演劇の実践―」
【要旨】
本論では、ルソン島北部イフガオ州ハパオ村の収穫儀礼 綱引きプンノックの復活の事例と、イフガオ州の高校教師を対象とした聞き書き演劇ワークショップの事例を文化の教育資源化として捉え、身体を通じた伝統的知識の継承が、世界文化遺産である棚田の持続可能性に寄与する資源化になるのか、また持続可能性を構築する資本形成につながるかを示す。1995年にユネスコ世界文化遺産に登録されたコーディリエラ棚田群は、ルソン島北部山岳地域のイフガオ州に広がり、伝統的農耕儀礼社会が形成されてきた。しかし、近年のグローバル経済の急速な浸透により若者の海外への出稼ぎや都市部への流出などにより、伝統的農耕儀礼社会は変容を余儀なくさている。そうした中での収穫儀礼プンノックの復活と、農村の日々の暮らしを対象とする聞き書き演劇の事例を取り上げ、相互の関係性を明らかにし、地域の持続可能性に寄与する文化の教育資源化と教育資本とは何かを提示する。

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◆お問い合わせ先
中部人類学談話会事務局
名城大学外国語学部国際英語学科津村研究室気付
E-mail: anthroch[at]gmail.com(@を[at]に置き換えています)
URL: https://anthroch.wordpress.com/
Facebook:https://www.facebook.com/ChubuJinrui/

中部地区研究懇談会担当理事 亀井伸孝(愛知県立大学)
中部人類学談話会会長 佐々木重洋(名古屋大学)
中部人類学談話会事務局 津村文彦(名城大学)、深田淳太郎(三重大学)

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