第203回例会の発表要旨

第203回例会の発表者及び演題、要旨は以下の通りです(20110121更新)。

■ 松田さおり(宇都宮共和大学)「ホステスの仕事:描かれ方の変遷と仕事観の検討」

[要旨] 本報告では、ある仕事についての描かれ方と、その仕事に従事する人が抱く自らの仕事についての考え方(仕事観)の二つについて、東京・銀座で働くホステス女性たちの事例から考察する。ホステスという仕事は、女性が男性をもてなし、接遇サービスを行う、という極めて「特殊」な役割を持っており、独特の位置づけがなされてきた。またこの仕事は、企業による接待交際活動の伸長と密接に関係しながら、その活動規模を拡大させ、さまざまな形で社会的な注目を集めてきた。と同時に、この仕事に従事する女性は、「取るに足らない」「いかがわしい」あるいは「まともでない」労働者としても描かれてきた。本報告では、「特殊」かつ「取るに足らない」「いかがわしい」そして「まともでない」仕事としてのホステスの起源と変遷について説明する。さらにクラブで働くホステスの女性たちの仕事観について、現場における観察と聞き取り調査の結果から検討する。

■ 輪倉 一広(福井県立大学)「救癩史の深層:岩下壮一の救癩思想研究」

[要旨] 大きくかぶって言えば、既往の近代日本救癩史研究の自明性を問い直すために一石を投じるのが本研究の目的である。方法としては、1930年から1940年までの10年間にわたって、救癩施設である「神山復生病院」の第6代院長(邦人初)を務めたカトリック思想家・岩下壮一(1889-1940)の福祉思想を、とくに彼の行った救癩事業実践との関係から検討したものである。それは単に岩下の救癩思想を明らかにしようとしたにとどまらず、既往の岩下研究はもとより近代日本救癩史研究においても正面から取り組まれることのなかった、癩患者と国民国家との内在的な関係構造を、その中間に位置する岩下を通して実証的に捕捉しながら明らかにしようとしたものである。その主要な成果は、癩患者と国民国家とをつなぐ位置にある「岩下」というテクストに映し出された患者‐国民国家の関係のより親和的な深層を、意味論として構造的な把握のもとに記述したことにある。

■ 中村亮(総合地球環境学研究所)「スワヒリ海村社会の多民族共存:タンザニア・キルワ島の生態的基礎と漁撈文化」

[要旨] 東アフリカのソマリア南部からモザンビークにいたる沿岸部は一般にスワヒリ海岸と呼ばれる。ここはマングローブとサンゴ礁の豊かな海環境を有する場所であるとともに、紀元前よりのアラブ・ペルシャ地域とのインド洋交易において、多民族が交流する国際交易都市として発展してきた場所でもある。交易都市は、おもに沿岸の島に形成された。島という限られた空間と資源の中で、多民族がどのように共存してきたのか/しているのかが本研究の問題意識である。

  本研究は、旧海洋イスラーム王国キルワ島(タンザニア南部)における、多民族の共存のありかたについて、その生態的基礎と漁撈文化の側面より解明することを目的とする。現在のキルワ島は、面積約12km2、人口1000人ほどの小海村であるとともに、そこに28民族(kabila, asili)が暮らすという超多民族社会でもある。キルワ島の28民族は大きく、バントゥ系民族とアラブ・ペルシャ系民族に分かれる。前者は第一次産業(漁撈、農耕)、後者は複合的な産業(漁撈、製塩業、運搬業)にたずさわる。

  まず、この島の生態的基礎を明らかにする。キルワ島はマングローブとサンゴ礁の二つの海をもつ。その海環境は三生態海域:マングローブ内海(生態海域1)、サンゴ礁をもつ外海(生態海域2)、境海(生態海域3)に分かれる。キルワ王国時代(10C-)より、外海ではなく、マングローブ内海に近い場所に居住空間が形成されてきた。そこでは、アラブ・ペルシャ系民族はモスク周辺や船着き場に近い沿岸部に住み、その後背にバントゥ系民族が住むという、民族に応じた居住空間の棲み分けがみられる。

  次に漁撈活動に注目して、民族に応じた資源利用について明らかにする。キルワ島には民族に応じた二つの漁撈文化:異なる生態海域を漁場として利用し、異なる漁具と漁法で、異なる水族を漁獲対象とする、がある。バントゥ系民族は、丸木舟や徒歩にて、浅い海(マングローブ内海とサンゴ礁池)で、採集漁中心の漁労活動をおこなう。他方、アラブ・ペルシャ系民族は、高価な竜骨構造船を使用して、外海での刺し網漁にたずさわる。

  民族に応じて、居住空間、生業空間、資源利用を棲み分けていることが、キルワ島の多民族の平和的な共存に貢献しているものと考えられる。このような民族間の棲み分けとともに、民族を統合するような信仰(イスラーム、精霊信仰)や儀礼(男子割礼)があることも、キルワ島の多民族共存にとって重要である。

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